歯周病とは、プラーク(歯垢)の中の歯周病菌が歯茎に炎症を起こし、徐々に周りの組織を破壊していく細菌感染症。痛みなどの自覚症状がほとんどないため、「サイレント・ディジーズ(静かに進行する病気)」とも呼ばれています。症状が進行すると、歯槽骨(歯を支える骨)を溶かし、やがて歯が抜けてしまいます。
歯周病は歯周病菌の感染によって起こる病気。
歯周病菌は、誰もが多かれ少なかれ持っているものですが、私達の体には細菌を防御する機能があり、すべての人が歯周病にかかるというわけではありません。発症するかどうかは、歯周病菌と、歯周病菌から身体を守ろうとする防御機能とのバランスが問題となります。
防御機能がきちんと働いていても、お口の中が不衛生で歯周病菌が多ければ、歯周病を発症しやすくなります。また十分に歯みがきをしていて、お口の中の歯周病菌が少ない人でも、身体の防御機能が低下していれば歯周病を発症しやすくなります。
身体の防御機能に影響を与える要因はさまざま。遺伝的な要因の場合もありますが、成人の方の歯周病のほとんどは、① お口の環境 ② 過剰な力 ③ 心身の状態が大きく影響していると言えるでしょう。
① お口の環境…お口の衛生状態が悪化すると、歯周病菌が増加し、歯周病を発症しやすくなります。また、口腔乾燥によって唾液が少なくなると、お口の中で細菌が増殖しやすくなる可能性が。放っておくと歯周病の症状を悪化させることになりかねません。
② 過剰な力…くいしばり・歯のかぶせ物の接触不良・硬すぎる食べ物などによる影響です。
これらの3つは、圧迫によって歯周組織の血液循環障害を起こし、歯周病のリスクを高めます。
③ 心身の状態…肩こりや腰痛などの整体的な問題・ストレス・糖尿病などによる影響です。整体的な問題は過剰な力を生み出しやすく、ストレスは自律神経のバランスを崩して免疫力の低下を引き起こします。また糖尿病は易感染性のため、歯周病菌に感染しやすくなります。
歯周病の恐さは、お口の中にとどまりません。全身に影響を与える病気です。「口の中だけの問題だから」と軽視していると、命の危険にさらされることにもなりかねません。早い段階で適切な治療をおこない、しっかり噛める状態にすることが大切です。
歯周病の進行で動脈硬化が促され、心筋梗塞や狭心症を引き起こすというデータがあります。
気管に入ってしまった歯周病菌が肺に送られ、誤嚥性肺炎を引き起こすケースがあります。
「歯周病の悪化で糖尿病が悪化した」という報告と、逆に「歯周病を治療して改善した後に血糖値が安定して糖尿病が改善した」という報告があります。
歯周病にかかった妊婦さんの早産や低体重児出産の確率が、通常に比べて約7倍になるというデータがあります。